目の前に聳え立つ巨大なドラゴンの戦闘を強いられた四人。
各々が武器を構え、隙を伺う。



「これだけの巨体なら攻撃に必ず隙が生まれる筈だ!そこを見逃すな!」


リオンの忠告通り三人はカウンターを狙う作戦に出る。
身体が大きい分、動きは鈍いようでチョコマカと動く達をドラゴンは目で追いきれていない。





「くらえっ爆炎剣!」

「双牙斬ッ!!」

「狂乱せし地霊の宴よ……ロックブレイク!!!」

「裁きの十字よ敵を撃て!ブラッディクロス!!!」




四人の連携が決まる。
さしものドラゴンも体制を崩しだした。






「よし今だ!行くぞ!」
「オッケー、リオン!!!」





「暗黒へ沈め!!」

「闇へと還れ!!」



「「インフェルノ・グラビティ!!」」








とリオンの合体奥義がとどめを刺す。
ドラゴンは雄たけびを上げ、ずぅんと地に倒れた。






「………疲れた」
「同感……。なんで此処にこんなドラゴンが…」





肩で息をするアッシュとルーク。
リオンが辺りを探り、もう危険は無いか調べる。
どうやらこのドラゴンで最後だったらしく、もう近くにモンスターはいなかった。







「まったく豪い目に……どうした、

「「?」」





リオンがに声をかけるが返事が無い。
の顔を見れば、足元をじっと見つめている。





?」



ルークが肩を叩いて呼べば、ハッと顔をあげる。




「あ、ごめんごめん。ちょっと疲れちゃってさ。さ、早く残りのバジリスク倒して戻ろうぜ」



そう言っては先へ進むよう促す。
ルークとアッシュは少し疑問に思いながらも流されるが、リオンだけは違った。


の違和感に気付いていた。


























クエストが終了し、エヴァへ戻った後ギルドへ結果報告へ行く。
持ち前の運の良さが発揮され、戻った早々別のクエストを同時クリアしていたことを知る。

バジリスクを倒した際に得られるバジリスクの鱗。
それを三つ持ってきて欲しいと言う依頼があったのだ。
十体も倒したのだから鱗も大量、すなわちこのクエストは受ける前からクリアと言うことになる。



「やった♪二件同時クリア」
「ラッキーだったな!」



ルークと笑い合う
その姿をリオンはじっと見ていた。





「何を考えてる?」



アッシュがそんなリオンの様子を見かねて声をかけた。
ルークは気付いていないかもしれないが、アッシュはやはりの態度が気になっていた。
一人先に気付いていたリオンなら何か知っているかもしれないと思ったのだ。






「…アイツは偶に突拍子も無い事をする奴だからな。不自然な時は徹底的に疑うことにしている」

「塔でのあの様子のことか?」

「ああ。…まあ無茶だけはしないと思うが一応注意しておけ」

「はっ。お前に言われるまでもねえ」





























――――日も暮れ、はテネブラエとミュウを連れ宿にいた。


ナタリアから城に泊まれと言うご好意もあったが、流石に一般人の自分がそんな手厚い歓迎を受けるのも気がひけた為やんわりと断った。
エヴァにいる間、リフィルは軍の研究所に呼ばれ、ガイに至っては音機関施設に泊り込んでいる為別行動である。





様?何か考え事ですか?」


「あ…うん。ちょっと今日行った珠海の塔が気になってさ」



はハロルドから貰ったマップを取り出す。
調べてみても、珠海の塔には印が付いてない。
ハロルドは軍内部の情報を使って教えてくれたと言うのだから、此処の事を知らないと言うことは無いだろう。
けれど、もしかしたら誰にも知られていないと言う可能性も在り得る。




「…ん?此処近いな」



気付いたのは珠海の塔から真っ直ぐ南に進んだ先にある△印。
そこは周りを水辺で囲まれ、孤島のようにぽつんとあった。
距離からして、それ程エヴァからは離れていない。






「…少し調べてみるか」




はマップを折りたたむと灯りを消し、ベッドに横になった。




























朝早く、宿を出発したはギルドへと向かった。
情報なり、人手なり、なんらかの助けを求めて。




ギルドの扉を開いてみると、其処には見覚えの無い青年がいた。
金色の髪、青を基調とした衣装に身を包んだ恐らくはアッシュ達と同世代。
その青年はクエストを何か受注して、の横をすり抜けギルドを出て行った。




「まだ会ってないアドリビトムがいたんだ…。おっと、急がないと」



は青年から視線を戻すと、ギルドに置いてある資料に手を伸ばした。










「…うーん…無いなあ。なんであんなに近いのに資料が無いんだろ…」


水辺に囲まれて近づけない為に調べる事が出来ず、情報が少ないのだろうか。
しかし、此処で諦めるわけにはいかない。
あの遺跡に石版があるのなら、確実に元・ディセンダーだった者が其処を守っている筈。
なんの前準備もせず飛び込めば、危険なことは分かりきっている。





「……そうだ」





は資料を戻し、ギルドを後にした。



































所変わって、エルグレア。



あの一件以来特に目立った事件も起こらず、とても平和な時を過ごしていた。





エルグレアギルドのリーダーであるイオンは穏やかな休憩時間を外で過ごしていた。
心地良い日差しを身に受け、ベンチに腰をかけ読書に勤しんでいる。




その時、何かが近づいてくる音が聞こえた。

本に向けていた視線を空に上げると、何か鳥のようなものが飛んでいる。
それはどんどんと近づいて来、エルグレアの上空まで差し掛かった頃には乗り物であることが分かった。




「あれは……なんでしょうか…」





乗り物がエルグレアの入り口の方へ飛んで行ったのを見届け、イオンは本を閉じる。










数分程して、見覚えのある姿がイオンの方へ走ってきた。




「イーオーンー!」

「…っ!!」








久し振りに会った仲間に互いに頬を緩ませる二人。



「お久し振りですね。…あれ?お一人ですか?」
「うん、今日来たのはちょっとパーティ編成にね」
「それは丁度良かった。、貴方にお客がいるんです」
「え?」



思いもがけないイオンの言葉にはポカンと口を開ける。
促されるまま、ギルドへとついていった。





















は少し此処で待っていてくださいね。呼んできますから」
「あ、うん。了解」





をソファに座らせると、イオンは奥へと入って行った。

五分と経たない内に、何やらドタバタと足音がの方へ近づいて来た。
イオンではない、とは分かったものの誰だろうと思考を巡らせているとドアが勢い良く開いた。




「!」




「………っ!」




扉を開けた人物は息を整えると、すぐさまに掴みかかった。






「てめえっ…!!!俺を置いて行ったきり何処行ってやがった!!」

「ちょっ!ちょっと待って!話せばわかる!す、スパーダっ!」



ガクガクと揺さぶられながらも、懸命に言葉を捜そうとする

そう、現れたのはイクセンで別れたスパーダだった。
ボルテージの上がりきったスパーダは口を突くまま言葉を矢のようにに浴びせる。






「飛行艇があったにせよ、なかったにせよ帰ってくるって言っただろうが!なのにてめえは何処まで捜しに行ってんだよ!」

「えっと、それはなんていうか…流れ?的なものもあってね…。ちょ、スパーダ吐きそう…」



振り回され続け、の顔色が悪くなる。
スパーダは完全にスイッチが入ったようで、それに気付かない。



そこでようやくに救いの手が入った。





「そこら辺でやめとけ。の意識が飛んでるぞ」





スパーダの肩を叩いたのはセネルだった。
ようやくの様子に気付いたスパーダは手を離した。
そのまま重力に従い、は床に座り込む。




「ありがと…セネル。ゲホゲホ…。でもなんでスパーダが此処に?」

「ああ、それはな
「イクセンにいても暇だからこっち来ただけだ!」


セネルを遮り、スパーダは答える。
それにセネルは苦笑し、肩をすくめる。


スパーダの目を盗んで、そっとイオンがに耳打ちした。






「本当はエヴァに行きたかったみたいですよ。と連絡をとるにはエヴァの大佐の力が必要だから、って言ってました」

「……!…そっか」



結構酷いことをされたが、の頬は緩んだままだった。
立ち上がるとそっぽを向いているスパーダに駆け寄り、飛びついた。




「ごめんなっスパーダ!」

「肉鍋とマーボーカレーとクリームパフェで許してやる」
「っおいっ!ちゃっかりしてんな!」
「俺も心配したから、みそおでんとビーフシチューな」
「セネルまでかよ!」
























ようやく落ち着き、本題に入ろうとは彼女を呼び出した。





「久し振りねっ!」

「リアラ!」





そう、が此処へ来た目的はリアラをPTメンバーに入れること。
彼女はと同じくディセンダーだった為、石版の部屋へ入っても行動する事が可能なのだ。
もし、珠海の塔やあの水辺に囲まれた遺跡に石版の部屋があれば必ず戦いになる。

確実にいるのは強敵ばかりと、これまでのことでは理解していた。
戦力を備えておくに越した事は無い。




「リアラ、オレ調べたい場所があるんだ。そこについてきてくれないかな?」
「……私を誘うってことは、この間のようなことが起こる可能性があるのね?」



は首を縦に振る。
リアラは真剣な眼差しを返し、力強く頷いた。




「わかったわ。私でよければ力になる。よろしくね」
「助かるよ!リア、ラっ?!」



ずしっとの両肩に乗る重み。左右で重さが違うのは二人の人物によるものだからだ。
ゆっくり振り返ると、そこにはにんまりと笑みを浮かべるセネルとスパーダがいた。





「「俺も行く」」


あ、これは拒否出来ないなとは悟った。

「……OK」























PTメンバーも揃い、達はエルグレアを出発しようとした。
街の入り口へと向かうと後ろから、少女の声が追いかけてくる。






「ちょ、ちょっと待って〜。……きゃあっ!



遠くから走ってきた少女は、達の目の前までようやく追いついたかと思うと盛大に転んだ。





「大丈夫!?」

「えへへ…また転んじゃった。あ、だいじょぶ。いつものことだから」


起き上がり、泥汚れを払うと少女は顔をあげた。




「どうしたの?コレット」




追いかけてきた少女はコレット。
以前の事件でに助けられた一人だ。
あれから、しばらくエルグレアに滞在していたとは何度かクエストを共にし仲良くなった。





「あのね、私も連れて行ってほしいの」


「「え?!」」